(4)部下の評価と査定
作業者の成長と仕事に対する貢献度を測定するために、部下の技能評価は欠かせません。評価方法や評価基準は企業全体の部署間のバランスを加味して、担当する部署(例、人事部)で決める必要があります。
次の表は、監督者による職場の作業者の評価点数表の事例です。点数の査定に当たっては、その根拠となるのは、日頃の作業日報の記録になります。さらに日頃から、仕事の評価データや実績等を記録しておかなくてはなりません
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次にその一例を示します。
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<説明> I :指導受けながら作業ができる(未熟練作業者)
L:標準時間内で作業が自らできる(熟練作業者)
U:他の作業者の指導ができる(リーダークラス)
□:標準作業書が作成できる(監督者補佐クラス)
赤記号:本年度の訓練計画
個人別教育訓練の計画は、作業者個人の適性や将来の目標などとその企業の方針を踏まえて、個人ごとに中長期的視点に立って計画を立案します、具体的には、年度ごとに具体的訓練計画を立てます。
(2)訓練計画の実施
監督者は、訓練計画に基づき、「訓練計画実施日程表」を作業者別に作成します。一般的にOJTで監督者が行ないますが、作業の内容によっては他の指導ができる者に任せることも行なわれています。さらに、技術者や他部署の専門スタッフなどに訓練の一部(例えば座学)を委託することも計画に織り込むようにします。
訓練日程表は、個人毎に具体的な内容と日程を記載しますが、ガントチャート(管理技術の項を参照)で、計画と実績を記載するようにすれば分かりやすくなります。
(3)OJT
技能訓練はOJT(On the Job Training)で行うのが基本ですが、実施する訓練の内容により、技術者や管理者の支援を得ることも考えます。訓練を行うには、次のような基準書が準備されていなくてはなりません。
・作業に必要な作業要件表
作業の品質基準、必要な知識、求める技能、習熟に要する 日数、技能ランクなど)
・作業マニュアル
・QC工程表(品質保証に関するもの可)
・使用する材料、設備、治具、工具などの基準書類
・その他作業に関する標準書類
(4)作業指導のやり方
作業者に作業を指導する場合、作業指図書(作業標準書など)を用いて行なうことが原則です。これは作業者達に同じ指導を行なうことであって、作業者によって指導する作業の方法などが違っていては、作業者は混乱します。作業者の器用さなど個性を尊重することは必要になりますが、標準作業の内容と異ならないようにします。
作業者に仕事を教える方法については、いろいろな参考書などがありますが、一般的な基本は知っておきたいものです。
第一段階:作業の内容を説明する
作業の目的や重要性、危険性など説明する。
第二段階:作業を自らやって見せる
作業の手順と作業の急所などやって見せる。
第三段階:作業者に作業をやらせる
作業をきちんと覚えているかやらせてみる。
第四段階:作業の出来映えをみる
作業動作や品質など不具合点など教える。
第五段階:作業状況を監察する
教えた後も時々作業の様子を監察する
(5)技能訓練の評価
作業者の訓練が終了時や定期的に技能訓練の評価を行います。訓練の評価は必ず記録保存して、その作業者の経歴として社内文書にして上長に報告するようにします。また、国家資格の取得、社内の技能検定などの受験を促し、一層の技能アップを図っていくことも大切です。なお、評価結果を時系列に比較して、部下の成長を把握し、さらに次の計画や指導に反映していくようにします。
(6)訓練結果の記録
OJTなどの訓練の結果、監督者の定めたレベルに達すれば合格とする。この結果は正確に記録しなければならない。また、合格レベルに達しなかった場合、その原因を分析して、次年度の計画に反映する。作業者の技能が向上すれば、人事部における「昇任」の資料にもなるし、賃金の「昇給」などに反映されなければならない。「努力すれば報われる」ように、企業は積極的に取組むことです。
(7)部下の夢の実現
部下の持つ夢を実現させることが監督者の仕事の一つです。夢の持てる会社や職場にすることが経営者や監督署の役割であると考えています。部下の夢を実現させるために、監督者は何をすべきかを考えていくべきです。「夢の持てる職場」は監督者自身も同じです。部下とともにその夢向かって行動していく取り組みが期待されています。
(8)教えるは待つこと
海外で仕事をして先ず感じたことは、「待つ」心です。海外工場では、現地の技術者や監督者又は作業者に教えることが仕事になります。しかし、なかなか教えた技術や技能が実行できません。迫ってくる時間(日程)に焦りながら、つい手を出すこともあります。その方が早いからです。
例えば、作業マニュアルを作成する時、自分で作成した方がすぐできるからです。現地の技術者は当然未熟(未経験)ですから、時間を要することになります。ここで手を出しては、現地の人たちのためになりません。じっと我慢することです。この気持ちがないと技術指導はうまくいきません。焦らず、相手が成長する(出来るようになる)のを待つということが教える基本であることを学びました。